東京高等裁判所 昭和27年(う)905号 判決
所論は原審においては被告人が昭和二十四年十月七日頃金五十万円を着服横領したと認定されたが、その中三十万円は組合長久保田泰司の命により信連から払戻を受け同人に手交したもので、被告人の横領したのは二十万円に過ぎないと主張するのである。
よつて記録を調査するに、被告人は原審まで右金五十万円の横領の事実を自白し、司法警察員及び検察官の面前においてそれぞれその大部分を銀行に預け入れた旨供述しているが、その預金情況に関する右各供述は一貫性を欠いている。右預金情況については銀行に照会する等の方法により容易にその詳細を明らかにし得ることが予想できるにかかわらず、右のようにくいちがつた供述のあるままで残されているような情況の下では、その横領金額に関する被告人の原審の供述についても、その儘直ちにこれを措信することを躊躇しない訳に行かない。
結局原審は審理不尽の結果判決に影響を及ぼす事実誤認を行つた疑があるから原判決はこの点において破棄を免れない。論旨は理由がある。